大判例

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東京高等裁判所 昭和43年(ラ)726号 決定

抗告人の本件抗告の趣旨は、「原中間判決を取消す。本件を大阪地方裁判所に移送する。」との決定を求める、というにあり、その理由は、別紙申立の理由記載のとおりである。

よつて按ずるに、裁判所は訴訟の全部又は一部がその管轄に属するか否かを職権で調査し、もしその管轄に属しないと認めたときは職権をもつてこれを管轄裁判所に移送する決定をなすべきものであり、当事者は防禦方法として管轄違の抗弁を提出し、その他移送に関する裁判所の職権発動を促すことはできるけれども、管轄違を理由とする移送の申立権を有するものではない。このことは、民事訴訟法第三一条および第三一条の二がそれぞれ「申立ニ因リ」との明文を存するのに対し、同法第三〇条第一項にはかかる明文の存しないことよりして明らかである。そうとすれば、当事者から管轄違を理由に移送の裁判を求める旨の陳述があつても、裁判所は、当該訴訟につき管轄権を有すると認めたときは、移送の申立却下の決定をなすべきではなく、そのまま審理を続行し、終局判決の理由中にその判断を掲げれば足るものというべく、終局判決前に特にその判断を明示するのを相当とするときは同法第一八四条にいう中間の争として、中間判決をもつて裁判所が管轄権を有することを明らかにするほかない。なんとなれば同法第三三条は、「移送ノ申立ヲ却下シタル裁判ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得」と規定しているが、同条により即時抗告をなすことができるのは、当事者に移送の申立権が認められている同法第三一条および第三一条の二の場合に限られ、管轄違を理由とする移送申立権は当事者にはないゆえ裁判所においてもこれにつき決定の形式をもつて却下の裁判をする方法はないからである。

本件記録によれば、静岡地方裁判所浜松支部昭和四三年(ワ)第二一九号売掛代金請求事件について、同事件の被告たる抗告人は、同事件は、同裁判所の管轄に属せず、抗告人の本店所在地であり、かつ特約により義務履行地とされた大阪市を管轄する大阪地方裁判所の管轄に属することを理由とし、かつ訴訟につき著しき損害又は遅滞を避けるため必要があることを理由として移送の裁判を求める旨の申立をしたところ、静岡地方裁判所浜松支部は、後者の理由による申立については申立権の存在を認めて申立却下の決定をし、前者の理由による申立については申立権を認めず、同裁判所が同事件につき管轄権を有することを明らかにするために、「当裁判所は本件につき義務履行地裁判所として管轄権を有する。」との中間判決をしたものであることが認められるのであつて、上述したところより明らかであるとおり、右中間判決にはなんら違法のかどはなく、中間判決に対しては独立して不服申立は許されないのであるから抗告人は右に対し控訴はもとより即時抗告をもつても不服の申立をすることはできないものといわなければならない。

(古山 川添万 右田)

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